「でも叶兎って割と運転荒いよね〜」
「いや分かる、割と容赦ないよね」
前方で飛鳥馬くんと春流くんの軽口が聞こえ、さらに不安が募る。
「いや、胡桃にお前らの時と同じ運転する訳ないから」
「え、ひどい」
「いーから、こんな話してないでさっさと進めよ」
天音くんが「へいへい」と適当に返事をして、2台が先に走り出す。
「胡桃、そこじゃなくて、落ちるからちゃんと掴んで」
天音くん達の方に気を取られていると突然腕を掴まれて前に引き寄せられる。
瞬間、叶兎くんの背中に抱きつく形になってしまった。
距離、近っ……
後ろからこんなにくっついたら、心臓の音が、絶対に聞こえてしまう。
そう思うと余計に跳ね上がって止まらない。
「凪、少し回り道してくからあとよろしく」
「回り道?……あー、分かった。到着してからのことは何とかしておく」
そう言った叶兎くんは右の角でハンドルを切って路地裏の方へバイクを走らせた。どうやら、他のみんなとは別行動らしい。

