──21時頃。


裏門の前でしばらく待っていると、ギィ…と鈍い音を立てて誰かが外から門を開いた。


「胡桃、こっち」


物陰から少し顔を出した叶兎くんは手招きするように小声で私を呼んだ。

こんな時間に外出なんて、バレたらどうなることやら…

ここの学園は全寮制で門限は20時、それ以降の外出には事前に申請が必要だ。

外出許可なんてもちろん出していない。
頭ではだめだと分かっていても、不思議と足は迷わず叶兎くんの方へ向かっていた。


「他の人に見られると面倒だから説明は後、とりあえず乗って」


裏門を出た道で待っていたのは、3台のバイク。

天音くんと飛鳥馬くん、桐葉くんと春流くんが1台ずつ二人乗りをしていて、多分この状況を見た限り私は叶兎くんの後ろに乗れってことだろう。


『バイク?!』


学園の校則で免許取得は禁止されてたからみんながバイクに乗ってる事に驚いたけど、既に校則無視なのは分かってたので冷静に……と思ってもやっぱり、初めて目にする光景には動揺してしまう。

なによりバイクの後ろなんて乗った事ない。


「捕まってれば落ちたりしないから早く乗って」

『わ、わかった。失礼しますっ…』



恐る恐る跨り、背中越しに叶兎くんの肩を軽く掴む。

それだけでも背中越しに彼の熱を感じて、体温が一気に上がる気がした。