「…っ、どうしてその子に肩入れするの!?立場的にもどう見ても釣り合ってないし──」
女子の一人が叫ぶ。
その声には苛立ちや嫉妬が滲んでいて、胸がちくりと痛んだ。
「釣り合う釣り合わないとか関係無ねぇよ。俺が勝手に胡桃を好きなだけ。文句あんなら、正々堂々俺に来れば?」
…………。
…待って、今なんて言った?
私の耳がおかしくなったのかな。
でも、確かに聞こえた。
「好き」──そう、言った。
「叶兎ったらすごい宣言したね」
「まさかあの叶兎から“好き”なんて言葉を聞くとは………」
隣で天音くんと桐葉くんが冷静に言葉を交わす。
どうしてそんなに落ち着いていられるの……!?
『え、ちょ、あの…』
あたふたしながら叶兎くんに話しかけると、くるっと私の方を振り向いて
「そーゆーことだから、次また何かあったら俺に言って?次からはただじゃ済まさないから」
当然のように言う叶兎くん。
その瞳は真剣で、迷いがひとつもない。
……“そーゆーこと”って何!?
「ほら今体育の時間だよ、試合の順番決めてたでしょ」
私の動揺をよそに、何事も無かったかのように次の試合が始まって
結局さっきの発言の真相は分からないままだった。

