ボール……

私に向かって投げられた…?


「おい、他人事みたいな顔してんじゃねぇよ」


普段と違う、この前私を助けてくれた時と同じような、ドスの効いた低い声。

その場にいた全員がこの空気に凍りついた。

背筋がぞわっと震えて、誰もが動きを止める。


その叶兎くんの視線が向かう先は、


「え、なんで私達を見るの?投げたのアイツでしょ?」


女子生徒4人組。

この前廊下にいた女子集団とはまた違う人達だ。

その指差した先には、確かにボールを投げたらしい男子生徒が立っていた。


でも、叶兎くんの視線は逸れない。

氷のように冷たい目で、その女子達を射抜いている。


「どうせお前らが仕組んだんでしょ、俺に隠し事が通用すると思ってんの?」

「っ…」


女子達が一瞬で言葉を失った。

叶兎くんの言葉は容赦がなく、逃げ場を塞ぐように迫ってくる。


「お前らが胡桃を見ながらコソコソ話してるの見えてたし、そいつがただ単に胡桃にボールを投げつけてもメリットなんてない。」


……やっぱり私、嫌われてるんだ。

少し仲良くなれるかもしれないって思ったばかりだったのに、
その気持ちがまた心の奥でぐしゃっと潰されていく。



「……はぁ。この際だから言うけど、胡桃に何かした奴は俺が許さない。

相手が、俺が、赤羽叶兎だってことを忘れるな」



みんなの視線が一斉に、叶兎くんへと集まる。

生徒会長で、WhiteLilyの総長…