総長は、甘くて危険な吸血鬼





「…転校早々授業サボるなんて、胡桃も問題児デビューだね」

『それ言ったら叶兎くんもだよ?』



軽口を叩き合いながら時計を見ると、もう1限が始まっていた。

まあ、生徒会権限を使えば出欠なんて誤魔化せる。普段は真面目に出てるしたまにはいい。



「俺は元々問題児認定されてるから、セーフ」

『それ何もセーフじゃない!』



問題児…とはちょっと違うけど、吸血鬼は監視されることが多い。

俺もきっと、裏では学園からは要注意人物とかそういう風に見られているんだろう。

ホント、吸血鬼ってめんどくさい。


それからしばらく沈黙が続いたけど、
苦痛じゃなかった。

むしろ空気が心地よかった。



「ねえ、胡桃」

『……』

「胡桃?…あれ、寝てる」



気づけば、小さな肩が俺の腕に預けられている。

最初は俺が寄りかかったはずなのにいつの間にか立場が逆になっていた。



「……こんな感情、初めてだな」



隣で眠る胡桃に、小さく呟いた。


胸の奥に芽生えたものを確かめるように。

その温もりに安心しながら、
俺も静かに目を閉じた。