『…も、もう大丈夫?』
口を離すと、胡桃が至近距離で俺を覗き込んでいた。
その表情は怯えでも嫌悪でもなくただ心配そうで。
「うん、ありがと。もう平気、ちょっと貧血だっただけだから」
本当はもっと欲しい
けど、これ以上は危険だ。
胡桃の瞳は、俺がちゃんと回復したか確かめるみたいに真っすぐ向けられていて、心配してくれてる事が…少しだけ嬉しい。
でも、守るって言った相手に心配させてる自分が情けない。
『授業始まっちゃうから私教室戻るけど、まだ体調悪いなら無理しないほうが──』
「ここにいてよ」
『…!?』
思わず口をついて出た言葉。
そう言って隣に座る胡桃の肩に寄りかかると、
驚いたのか、胡桃は固まって目を見開いた。
『…あ、あの、叶兎くん?』
「何?」
『それは私の方が聞きたいんですけど…』
「……」
やっぱり、胡桃は
今まで会ってきたどの女とも違う。
親切だし、優しいけど
俺に媚を売るような目は全く無くて
俺と、対等に接してくれる。

