『叶兎くん、どうしたの?!具合悪い…?』
……吸いたい
血が、欲しい
喉の奥が焼けるみたいに乾いていた。
体が、血を求めている。
俺は生まれつき、人よりも血を摂らないと気力を保てない体質だ。昨日の夜から血を摂っていなかったのに、今朝は無駄に体力を使ったせいで軽く貧血を起こしているんだと思う。
胡桃は俺の体を支えながら、そっとソファーに座らせてくれた。
「血……欲しい」
『血…?!う、うん分かった。それで体調が良くなるなら…』
…あれ、もっと拒否られるかと思ってた。
けど胡桃はほんの一瞬驚いただけでその瞳は真剣で、拒む色なんて一切なかった。
本人が良いって言ったんだし、なら遠慮しなくて良いよね。
俺は胡桃の肩に手を添え、細い首筋に顔を寄せる。
胡桃の肩が小さく震えた。
「……少しだけ」
そう囁いてから牙を立てると、温かい血が舌に広がる。喉を通る血で、体の奥から力が戻ってくるのがわかる。
……美味しい。
おまけに味は美味しいし、胡桃に会うまでは、こんなに美味しい血が存在するなんて思ってなかった
こんな血が、この世にあるなんて知らなかった。
今まで仕方なく摂取していた血は、どれも薬みたいに苦くて、ただの義務だった。
だけど胡桃の血は違う。
甘く、深く、飲むほどにもっと欲しくなる。

