総長は、甘くて危険な吸血鬼





「確かにそれもそうだねー」


羽雨がわざとらしく笑って俺を見た。

……多分気づかれてるな、俺の考えに。


「ひとまず胡桃の事は俺達が守るから、何かあったら必ず誰かに助けを求めて。」

『…わかった。ありがとう』


小さく頷く胡桃。
その顔を見て、胸の奥がかすかに疼いた。


「じゃあ一旦教室戻ろうか、急げば1限に間に合うよ」


春流がそう言って生徒会寮の扉を開けて、それに続いて他のみんなも部屋の外に出ていく。

俺も教室に戻ろうとソファーから立ち上がると、
一瞬、視界が揺れた


足元がふらつき、前のめりになる。

最後に見えたのは、部屋を出ようとしていた胡桃の背中。



……あー、結構やばい


そのまま前に体が崩れ落ちていき──



『叶兎くんっ!?』



あ、倒れる。と思ったところで、


気づけば、胡桃が俺の腕を掴んでいた。

小柄な身体で必死に俺を支えたその温もりが、やけに近い。