『え?どうして私の名前知って…』
私、名乗ったっけ?
…いや、名乗ってない
「やっぱり!A組でしょ?俺、月城 春流。胡桃ちゃんと同じクラスだから、教室まで案内するよ」
『そうなんですか?ありがとうございます…!』
礼を言った瞬間に気づいた。
今、彼は自然に私の名前を呼んだ。しかも下の名前で。
都会の男子って、こんな距離感なの?
男子とほとんど関わってこなかった私にはあまり馴染みのないものだった。
「…ねぇ、胡桃ちゃんって、特殊な家系だったりする?」
教室までの廊下を歩いている途中、月城くんが問いかけてきた。
『特殊な家系…とは?』
けど、言ってる意味が分からなくて質問に質問で返してしまう。
「例えば、親が吸血鬼だとか…」
私の親が??
そんな話、一度も聞いたことがない。
私は普通の人間だし、吸血鬼についてもほとんど知らない。
親が吸血鬼なんてあるはずがない。

