その時、叶兎くんの背後に人影が見えて

キラッと、金属が光った。


…っ危ない!


私にできることなんてほとんどないのに、考えるより先に身体が動いていた。



『叶兎くん後ろ!!!』


5人の男が叶兎くん達の方へ向かったと同時に走り、瑠奈ちゃんと心音ちゃんの前に立ち塞がっていた男の脇腹へ、勢いのまま蹴りを叩き込む。


「ぐっ…!」


お父さんから教わった護身術、こんなすぐにまた役に立つ機会があるなんて。

実際に使う場面が今までなかったので意外と威力があって自分でもびっくりした。思っていた以上にちゃんと身についていて心の中で再度お父さんに感謝を贈る。


「胡桃?!…っ!」


叶兎くんは振り返ると、後ろからバットを持って襲ってきた男をいとも容易く片手で投げ飛ばす。


「心音ちゃん瑠奈ちゃん大丈夫?!何もされてない?」

「胡桃っ!?うん、大丈夫。ありがとう…」


2人が無事と分かって胸の奥の緊張が少し緩んだ。

けどそれもつかの間、7人の男全員が私を見ていた。


完全に目をつけられたみたいで嫌な予感が背筋を這い上がる。


『あ、えっと…………』


ちょっと、いや、だいぶまずい


じりじりと、距離を詰めてくる相手に足が竦む。


さっきまでの勇気はどこへやら、膝が小刻みに震えた。


何も考えずに出てきてしまった自分が情けない。



「お前、“朝宮胡桃”か?」