「胡桃」
『何──んっ…!?』
返事をしようとした瞬間、叶兎くんが急激に距離を詰めてきた。
唇に触れたのは、驚くほど柔らかくて、温かい感触。
優しくて、熱くて。
叶兎くんがそっと離れて、自分の身に何が起きたのかを理解した途端、一瞬にして膝から力が抜けた。
ぐいっと腰を支えられて、また密着するような形になってしまう。
「あはは、顔、真っ赤。」
見上げた先にあったのは、意悪で、でもすごく楽しそうな──満面の笑み。
叶兎くんが笑ったところ、初めて見た。
ずっと無愛想で意地悪ばかり言っていたのに、こんな土壇場でそんな可愛い笑顔を見せるなんて、ズルすぎる。
「血だけじゃなくて、胡桃自身が欲しくなった」
…なんか私今とんでもない事言われてる?!
ドクン、ドクンと、胸の中の鼓動がうるさいくらいに速くなっていく。
今朝までは「他意はない」なんて冷たく言っていたくせに。
「これから覚悟しといて、胡桃」
口角を上げて、笑みを浮かべた叶兎くん。
私、とんでもない人に気に入られてしまったかもしれません…。


