「ねえ、ちょっといい?」



保健室を出てほっと息をついた瞬間、いきなり背後から肩を掴まれた。

振り返れば数人の女子が立っていて、その目を見た瞬間に状況を理解してしまった。



…あ、これ、私嫌われてる。



「あんたさぁマジで何なの?」

『…何が?』



何が?なんて聞かなくても察せるのに、咄嗟にそう返答してしまった。

…多分、私の予想通りの要件だと思う。


「とぼけないで。転校生のくせに月城くんの事なんか下の名前で呼んじゃって、挙句の果てにはあの赤羽くんに血を吸われるとか。さっき栗栖くんとも話してたみたいだし、マジありえないんだけど」

『……』

「は?何、シカト?」


だって、そんな事言われても何て返せば良いのか…

どうせ私が何を言っても余計火に油を注ぐだけ。


「一体どうやって気に入られた訳?転校早々色仕掛けでもしたの?」

『いたっ…』


突き飛ばされた肩が壁にぶつかる、
気づけば人数が増えていて、私は壁際に追い詰められていた。



「ねぇちょっと聞いてんの?何とか言えよ」



…こういうのは、まともに返事したところで聞いてくれない。



『…私は、何もしてない。それに、あの人達にただの色仕掛けが通用するように見える?」



言葉を選んでなるべく冷静に返した

舐められないように、正論で。



「は…、」

『…仮にそう思ってるなら彼らの事を悪く言ってるのと同じだよ』

「…………」



目の前の女子達は一瞬、言葉に詰まった。

そもそも、あの人達に気に入られようとするような汚い手が通用する訳ない

…それに、見えてるのは目の前の相手じゃなくて“血”なんだから。

私だって、“血が気に入られた”ただそれだけの事だ。