『…っ』
天音くんの唇が私の首筋に触れた。
この体勢で抵抗できる訳もなく、私は諦めて身を任せる。
一瞬、軽い痛みが首元に走った。
でも痛みと呼ぶほど鋭くはなくて…、すぐにその感覚は離れていった。
「今回はこれで見逃してあげる。…でもいつか吸わせてね?」
耳元でそう言われ、思わず息を呑む。
今のは……吸われて、ない?
結局天音くんは何がしたかったんだろう…?
「それじゃ、また寮で」
『ちょ、ちょっと待って。天音くん私に用事があったんじゃ…』
「あーそれね。また今度にするよ。その時は……ね?」
そう言い残して保健室から出て行ってしまった天音くん
なんだか意味深な言い方だったけど…。
栗栖天音くん、掴みどころがなくて何を考えているのかいまいち分からない。
フレンドリーに話しかけてくるのに…どこか一定の距離を保たれているような気もして…
『……不思議な人』
胸に残る鼓動の速さを抑えきれず、私は小さく呟いた。

