栗栖くんはふっと口角を上げて軽く笑った。



「………へえ、胡桃ちゃんってやっぱり面白いね。」

『面白い…?』



意味を問う間もなく栗栖くんは体を起こした。

距離が離れたことに、私はひとまず胸を撫で下ろす。



「ははっ、俺にあんな間近で迫られても態度を変えなかった子は初めてだよ………落としたくなる」


『…!!』



でも、ホッとしたのもつかの間、
両腕を掴まれてベッドに押し付けられる。

ぎし、と軋む音が妙に鮮明に響いた。



『ちょっ栗栖く──』


「その呼び方も禁止。天音って呼んでよ」


『…………天、音くん?』


いくら相手が吸血鬼で血が目当てだとしても、そんな風のまじまじと見つめられると流石に平常心ではいられない。