「………行ったか。ごめんね〜突然、俺事務仕事ホント無理」



布団の暗がりの中、至近距離で視線がぶつかった。


この暗さでもわかる綺麗な水色の瞳。
淡い光を映す水色の瞳は、不思議と鮮やかに輝いて見えた。


確か…吸血鬼は瞳の色が特徴的って昔読んだ本に書いてあったっけ。



………じゃなくて!!

え?どういう状況?


栗栖くんは桐葉くんから逃げてて、見つかりそうになったから保健室にあった布団の中に引っ張り込まれて…。




「……今、俺の目見て綺麗って思ったでしょ」



…バレてる!!


布団を被ったまま私の上に馬乗り状態の栗栖くんが、私の耳元で囁いた。

と言っても私に体重をかけないように腕と足で自分の体重を支えて気遣ってくれている。



まるで心を読まれたみたいで慌てて目を逸らしたけど、栗栖くんはそれを楽しむように布団をばさっと床に投げ捨てた。



「ねえ、叶兎があんな風に言うなんて…胡桃ちゃんの血ってどんな味するのかな」



私を上から見下ろす栗栖くんの表情を見て…なんだか怖くなった。

その声音は笑っているのに、目の奥は冷たい光を帯びていて。


吸血鬼ってみんなこうなのかな、


私じゃなくて…私の血を見てる。



思わず喉が詰まり、言葉が出てこない。



『…栗栖くん、近い。』