式典は無事に終わりホールに再び賑やかさが戻ると、あの厳かな空気が嘘みたいに騒がしくなっていた。
その中心にいる叶兎くんは次々に声をかけられながらもひとりひとりに誠実に言葉を返している。
姿勢も表情も、すっかり“トップの顔”だった。
私は壁際に立ち、そんな叶兎くんを遠くから見つめながら軽く息を整える。
…でもどこか、喧騒の中でひとり取り残されたような感覚があった。
……叶兎くん、本当にすごいな。
軽く笑って、グラスを傾けたその瞬間
視界の端を見覚えのある姿が横切った。
『……朔?』
思わず呟いた。
…見間違いじゃない。
会場の出口の方へ歩いていくその姿を、私は無意識に追いかけていた。
『ま、待って!』
廊下に出てやっと袖を掴む。
振り返った朔は、少し驚いたように目を見開いた。
「……!? くーちゃん……」
その声には、少しだけ戸惑いが混ざっていた。
『やっぱり朔だ!……久しぶりだね』
私が笑うと、朔は小さく頷いた。
けれどすぐに、どこか言葉を飲み込むように視線を逸らされる。
『聞いたよ。お父さんのところで働いてるって。』
「……うん。」
その返事は小さくて、照明の下で少しだけ肩が強張って見えた。
そして、ほんの短い沈黙のあと…
「……くーちゃん、本当にごめん。」
朔は押し殺すような声で、ぽつりと零した。
『え……?』
「僕のせいで、あんな怪我……。僕が能力をちゃんと扱えていたら…」
朔は唇を噛んで、俯いたまま拳を握る。
…ずっと、あの日のこと気にしてたんだ。

