「胡桃ちゃん!久しぶりね〜!ドレス姿めちゃくちゃかわいい〜っ!!」

『えっ、あの、きゃっ!?』



そして勢いのまま、ふわふわの香水の香りと、柔らかな腕の中にすっぽり包まれる。

驚く間もなく頬をすり寄せられて、声が裏返った。


「ちょ、!」


叶兎くんが慌ててその腕を引き剥がすと、華恋さんはにやりと楽しそうに笑う。


「あらあら〜、嫉妬?」

「……母さん……!」



叶兎くんは眉を寄せながらも、どこか照れくさそうに目を逸らす。
頬がうっすら赤く染まっていて、それがまた可愛くて思わず笑ってしまう。

叶兎くんがこんなに翻弄されてるの珍しいな…流石お母さん。


そんな2人の様子を見ていた湊さんは、華恋さんの勢いに少し呆れたように、でもどこか楽しそうに静かに笑った。



「……本当に変わったな、叶兎。」

「こんな顔、昔は絶対しなかったのにねぇ。」



華恋さんが満足げに言うと、叶兎くんはますます居心地悪そうに視線を逸らす。

その様子を見て、彼がどれだけ愛されて育ってきたのかが自然と伝わってきた。



「胡桃ちゃん、本当にありがとうね。」

『い、いえっ……そんな……! 私のほうこそ、叶兎くんにたくさん助けてもらってばっかりで…!』



華恋さんの笑顔を向けられると、まるで家族に受け入れられたみたいで心がふわっと軽くなる。


「ていうか、母さんたちと胡桃って会ったことあるの?」

「うん、文化祭の時にね〜!」


……あの時のこと、叶兎くんには言ってない。
だって、あの時話した内容なんて本人に聞かれたくないもん……!