【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ





「ねえ、そんなのどこで覚えてくんの?」



低く掠れた甘い声が頭上から降ってきて、そっと覗き込むように顔を近づけられる。

や、やばい…!

叶兎くんの変なスイッチ入れちゃったかもしれない…!



「……かわいすぎて、今すぐここで押し倒してキスしたい。」



い、今そんな事したら式典に集中できなくなるっ…!

目が冗談じゃなくて、思わず息を呑む。



『っ、だ、ダメだよ!?今から大事な式典なんだから……!』

「式典の前に、少しくらい魔除けのキスしても——」

『しないっ!!』



思わず声を張り上げて、近づく唇を両手で塞いだ。


ほんの少しでも動けば唇が触れてしまう距離。

息がかかって、心臓が暴れるように跳ねる。


だって……叶兎くんの“少しくらい”なんて絶対に嘘だし、軽いキスなんかで終わるわけないんだもん……っ!



その時。


──ガチャッ。



勢いよく扉が開き、心臓がびくりと跳ねた。

反射的に叶兎くんを強く押し返して距離を取る。



「あら〜〜!やっぱりここにいた〜!」



入ってきたのは銀色の髪を揺らす華やかな女性。

その後ろからは、落ち着いた黒髪の男性。



「……母さん!?ノックくらいしろよ……!」



叶兎くんが、見たこともないような焦った声を上げて叫ぶ。

けれどそんな抗議なんてお構いなしに、華恋さんは私を見つけた瞬間、ルビーみたいに真っ赤でキラキラした瞳を輝かせ、眩しいほどの超絶笑顔を浮かべながら一直線に駆け寄ってきた。



──叶兎くんのご両親、華恋さんと湊さん。

文化祭の日に会った、あの2人だ。



直接会うのは文化祭以来だけど、メールや電話では何度かやりとりをしていた。