「だから私は信じてる。彼なら、絶対に胡桃を幸せにしてくれるって。」



…そうだ。不安になる必要なんて最初からなかったんだ。

叶兎くんが私を信じてくれたように、私も彼を信じてるから。



──コンコン。



「……胡桃。入ってもいい?」



ドアの向こうから聞こえてきた、聞き慣れた声。



「噂をすれば、ね。……私は行くから、またあとで。頑張って、胡桃。」



その声を聞くなり、母はそう言って笑って部屋を出ていく。

すれ違うように叶兎くんが部屋の中に入って来て、扉が静かに閉まった。


こちらへ近づいて来た叶兎くんが、視線がまっすぐ私を捕らえたまま、動かない。


……そ、そんなに、見つめないでよ。



『……変じゃ、ないかな…?』



思わず問いかけると、叶兎くんはわずかに口元を押さえた。



「……………やばい。めっちゃかわいい。」



黒のスーツに身を包んだ叶兎くんは普段よりも大人びた雰囲気を纏っていて、少し頬を赤らめて言う叶兎くんの姿にこちらまで顔が熱くなる。



『……ほんと?』

「可愛すぎて困る。他の奴らに見せたくない。」

『お、おおげさだよ……!』

「胡桃、可愛いんだからもっと自覚持って。どこで変な男が寄ってくるか分かんないから、心配なんだよ。」



その言葉に、鼓動が速くなる。
そんなふうに真っ直ぐ言われたら、もうどうしたらいいか分からない。



『………心配しなくても、私は叶兎くんのものだよ……?』



………って、な、何言ってるの私!?

自分で言って顔が真っ赤になる。
慌てて視線を逸らした瞬間、叶兎くんがそっと手を取った。