【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ





「俺も…我儘言っていい?」

『…え…?……我儘……?』



叶兎くんは一度深く息を吸い込むと、決意を込めるように真っ直ぐに言った。



『………俺と一緒に、来てくれませんか』



──心のどこかで、ずっと待っていた言葉。

たった一言でも、意味は全部伝わった。



人間として普通に生きるか、叶兎くんの隣に立つか。

その二択の答えは……とっくに心の中で決まっていた。



ただ、後一歩踏み出す勇気がなかっただけで。



私は…特に夢も目標もはっきりしていなかった。

でも、叶兎くんと出会って、知らなかった世界を知って、彼の隣で見る景色がいつの間にか私の日常になっていた。



「俺には胡桃が必要で……やっぱり、どんな時でも一番近くにいてほしいのは胡桃なんだ」



叶兎くんの言葉がまっすぐに胸の奥に落ちてくる。


その表情は少し緊張していて、でも嘘ひとつなくて。

勇気を出して言ってくれたのが分かった。


叶兎くんは私を、必要としてくれた。



『……私、叶兎くんと同じ世界が見たい。ずっと、叶兎くんの隣で』



言葉を返すと、叶兎くんの目が見開かれ、やがて柔らかく笑った。



『私を連れていって。どこまでだって、ついていく覚悟はできてるから……!』



自分の口から言葉にした瞬間、胸の奥を重く縛りつけていた迷いが嘘みたいに消え去り、心がスッと軽くなった気がする。


まるで、ずっと心の奥に引っかかっていた大きなトゲが、綺麗に取り除かれたような爽快な気分だった。


叶兎くんの手が伸びてきて、そっと愛おしそうに私の頬を撫でる。



「…ありがとう、胡桃。…いつも、俺が欲しい言葉以上のものをくれるからずるいよ」

『…それは叶兎くんもだよ?』



もう迷わない。

私は…叶兎くんの隣で生きていきたい。