「一般人は僕が避難させる。気にせず相手を見ろ。」
困惑の色が混じっていたWhite Lillyの面々も、俺がはっきり言い切れば次第に無言で頷き指示に従い始める。
そして戦況が整いわずか数分で騒動は収束した。
…連携が下手なだけで、やればできるじゃんこのチーム。
状況が落ち着いたところで、制服の袖口についた埃を払うように袖を軽く叩く。
「……お前、何者?」
そんな俺に、赤羽叶兎が歩み寄って来た。
凛とした瞳が俺を真っ直ぐに射抜く。
瞳の奥に…わずかな警戒と興味。
「…通りすがりの学生。」
「……へぇ…。その制服ってことは白星の一年だよね。」
…大丈夫、バレてない。
内心で安堵のため息を吐き、軽く笑った。
「まあ、はい。」
「しかも、吸血鬼だよね。」
……流石に吸血鬼は隠せないか。
まあでも正体がバレていなければ何でも良い。
赤羽叶兎はふっと笑みを浮かべ、俺の前に手を差し出した。
「……いいね。ちょうど人手が足りないと思ってたんだ。君、生徒会入らない?」
思わず瞬きをする。予想していなかった展開。
……そうか、その手があった。
あまり近すぎる立場はリスクが伴うけど…俺に出来ない仕事なんてない。
これは好都合だ。
近くで叶兎を観察できるなら、麗音さんへの報告もより正確になる。
「……生徒会ですか。良いですよ。」
軽く笑って、差し出された手を握り返した。
この時から俺は、“監視対象”としてだけではなく、“仲間”として接する事になる。
境界線が、少しだけ曖昧になった瞬間だった。

