総長は、甘くて危険な吸血鬼




「今度、みんなも集めてちゃんと話すから。もう少しだけ待って。」



ちゃんと話す……何のことだろう。
私のお父さんと関係がある事…?

どういう意味かと聞く前に、飛鳥馬くんはわざと話題をすり替えるように言葉を続けた。



「ていうか胡桃さ、叶兎と話したいなら話しかけに行きなよ。なんでそこで遠慮してるの?」

『……!』



そう言われて、私は反射的に視線を逸らした。

図星すぎて、何も言えなかった。



「胡桃が行かないなら僕が行く。」

『えっ?それってどういう──』

「どうもこうもないよ。見てるこっちがじれったい。……胡桃のそんな顔、麗音さんに見せられないし。」

『待っ……!』



言葉が終わる前に飛鳥馬くんは歩き出していた。

スタスタとした足取りは迷いがなく、私を追い越していく。


慌てて追いかけると、飛鳥馬くんはふいに立ち止まってゆっくりと振り返った。



「ま、僕に任せてみな。」



ほんの少し、いたずらっぽく笑って。


……任せるって、なにを……?


飛鳥馬くんはそう言い残した後そのまま背を向け、落ち葉を踏みながら並木道を歩いていった。

胸の奥がざわめく。
一体、何をどうするつもりなんだろう。

去っていく背中を目で追いながら、私はゆっくりと夜空を見上げた。