『……私のお父さんが?』
探るように言葉を重ねると、一瞬、飛鳥馬くんの瞳が揺れた。
けれどすぐに目を伏せ、いつもの穏やかな笑みを浮かべる。
「……聞こえてたのか。」
苦笑混じりのにそう言った飛鳥馬くんは特に否定するでも焦るでもなく、穏やかだった。
「……好奇心があるのはいいことだけど、そうやって他人に踏み込む癖、いい加減やめた方がいいと思うよ。」
『あっ……ごめん、そうだよね……』
勝手に聞いてしまったのは、良くないよね…
そう思って素直に謝ったけれど、別に怒っている訳ではないみたいだった。
……飛鳥馬くんって、いまだに接し方が分からない。
なんというか、飛鳥馬くんはいつも他人と一定の距離を取っている気がして。ある程度からは踏み込ませてくれないという圧がある。
「……天音の時も、怪我の時だってそう。危険を顧みずに誰かのために動く。」
飛鳥馬くんの視線がまっすぐ私を射抜いた。
「だから放っておけない。」
『……え?』
その言葉の意味を探す間もなく、一拍置いて静かに呟く。
「……ほんと、麗音さんにそっくり。」
『……! やっぱり、お父さんと……!』
思わず一歩近づいた私に、飛鳥馬くんは苦笑して目を細めた。

