【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



私はベッドのシーツをぎゅっと握りしめた。



『叶兎くんは……』

「……え?」

『周りからの非難とか危険とか……そういうのを全部抜きにして……叶兎くん自身は、どう思う……?』



叶兎くんは一瞬だけ視線を私に向け、そしてゆっくりと口を開く。



「……胡桃が隣に立ってくれたら……世界一心強いよ」



優しく細められた目に見つめられ、また心臓が跳ねる。

隣に立って欲しいと言ってくれたその言葉に、思わず私も微笑んだ。


…私はまだ、吸血鬼のことも、この世界の危険も、何も分かっていない。

叶兎くんがどれだけの責任を背負っているか、その隣に立つことがどれだけ大変かも、まだ分からない。



…でも。今すぐ断言できなくても、私の心は…多分変わらない。

そして、その答えは…叶兎くんと共に歩きたい、という気持ちだった。


叶兎くんはゆっくりと手を伸ばすと、シーツを握りしめていた私の手を優しく包み込む。



「まだ時間はあるから、ゆっくり考えて。どっちを選んでも、俺はもう胡桃のこと離すつもりないから」



その言葉と同時に、手をぎゅっと握られた。

迷いのない瞳が真っ直ぐ私を貫く。



「どんなことがあっても、胡桃を守る。命を懸けて」



低く響くその声が胸の奥に落ちて、息を呑む。

そして、そっと私の額に手を伸ばし、髪を指先ですくように撫でた。



「…胡桃」



叶兎くんの優しい瞳が、真っ直ぐに私を射抜いていた。

吸い込まれそうなほど澄んだ赤がすぐ近くにある。


そして息を呑むよりも早く、柔らかな温もりが私の唇を塞いだ。


唇が触れ合った瞬間、時間が止まったかのように感じる。

短いキスのはずなのに…まるで永遠に続くかのように深く胸に刻まれた。


この幸せがずっと続けばいい。

心の底から、そう願った瞬間だった。