「……ごめん。こういうことは契約の前に話すべき事だったよね……」


叶兎くんはベッドの脇に立っていて、さっきまでの凛とした堂々とした雰囲気とは違うどこか申し訳なさそうな目で私を見つめていた。


『いいよ。秘密にしなきゃいけなかったんなら仕方ないし……それに、私、もしこの話を知っててもきっと同じ選択をしてたと思うから』


少し安心したように、叶兎くんの肩の力が抜けるのが見えた。


「胡桃……」

『でも、すごいなぁ、トップなんて。お父さんがそうだったのも驚きだけど…!』


びっくりする情報量が多すぎて、一周回って冷静になれた。
不安を考えないように明るく口に出してみる。

でも、やっぱり叶兎くんには全部お見通しだろう。


「あのね、胡桃。俺はトップとして生きることにはなるけど……胡桃には、胡桃が生きたいように生きてほしい。どっちの道を選んでも、俺は一生胡桃のそばにいる」


その言葉に、胸の奥がぎゅっと熱くなる。

叶兎くんは少し視線を落として続けた。


「……人間の胡桃が俺と一緒にトップとして立つなら、少なからず非難する奴はいる。それに危険もつきまとうから……今まで通り普通に人間として生きる方が安全だとは思う」


真剣な声。
その奥には、彼自身の覚悟と、私を思いやる気持ちが確かにあった。