「だから、責任取って?…これは無茶した罰」


叶兎くんの声は驚くほど柔らかいのに、指先が逃げ道を与えないほど強く絡みついてくる。

拒む余地なんて最初からなくて心臓の音だけが胸の奥でうるさく響いた。


『う…』


もう。そう言われたら、素直になるしかない。

視線をそらしたまま小さく囁いた。


『………目は…閉じて…』


私は観念して顔を上げ、ゆっくりと顔を近づける


そして唇が触れ合う──その直前だった。




「胡桃っち〜お見舞い来たよー!」



聞き慣れた天音くんの陽気な声が廊下から飛び込んで来た。

勢いよくドアが開け放たれ、WhiteLillyのみんなが駆け込んでくる。驚いた私は反射的に叶兎くんの胸にもぐり込んだ。



「………おい。」



叶兎くんの低い声が室内を震わせ、
その場にいた全員が「あっ」と息を呑む。


「だからノックしろっつったのに」


後方で九条くんが呆れ顔で呟いたけど、その声音にはどこか安堵が滲んでいた。


「……でも、目が覚めたんだね…!ほんとに無事で良かったよ」


春流くんが、空気を変えようと柔らかい笑みを浮かべてこちらへ歩み寄る。
その後ろから他のみんなも近づいてきて、部屋が一気に明るくなった。


「丸一日、寝たきりだったもんな」


凪くんが苦笑しながら肩を竦めた。

…そっか、私そんなに眠ってたんだ。


「……一時はどうなるかと思った」


飛鳥馬くんも静かに呟き、腕を組んだまま視線を落とした。


こうやってみんなが揃って姿を見ると、日常が戻ってきたみたいでなんだか安心して自然と頬が緩んでいく。