「……夢じゃないよ。」
あまりに強い力で抱きしめられるから、苦しくて思わず体が強張った。
その力強さに、何も言われなくてもどれだけ心配してくれていたかが伝わってくる。
「……………無事で……良かった…」
その声は細く、震えていて。
しばらく叶兎くんは私を抱きしめたまま、何も言わなかった。
『…心配かけて、ごめん』
けど、謝ると返ってきたのは、
「…………やだ」
まるで子供みたいに拗ねたような、短い言葉。
『えっ……やだって何…』
叶兎くんはほんの一瞬だけ目を細めて、私の手の甲を自分の頬に引き寄せる。
親指の腹がやわらかく触れて、熱がじんわり広がった。
「…そっちからキスしてくれたら、許してあげる」
いたずらに笑った叶兎くんの瞳がきらりと光って、上目遣いが色っぽく見えた。
反対の手はいつの間にか絡め取られていて、恋人繋ぎでがっつりと捕まえられている。
『な、なんでまたそういう流れに…!!』
「いいじゃん。前もしてくれたでしょ?」
そういう問題じゃない…!
そもそも、ここ病院!!
でも、どんどん叶兎くんの視線が強くなってついに心が折れそうになる。
「…………何度も無茶するなって言ったのに、俺がどれだけ心配したと思ってるの?」
じっと見据えてくる視線は、叱るようで、泣きそうなほど切実で。
反論できるはずもなく、ただ胸が痛む。
……それは、ほんと、反省してます
「なのに、目が覚めたら可愛いこと言い始めるから叱る気なくなっちゃったし。」
言葉と一緒に叶兎くんの指先が私の手の甲を滑り、掌を覆うように持ち上げる。指の動きは確信犯的に色っぽく、反射的に息が浅くなっていく。

