【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




私には何も出来ないどころか、迷惑をかけてしまってもどかしかった。


私のすぐ隣にしゃがみ込んだ叶兎くんが、震える手で私の冷たい手をギュッと握り締め、もう片方の大きな手のひらで私の頬を包み込む。



「……お願いだから、もうあんな無茶しないで」



微かに声が震えている。



『……叶兎くんが、無事で…良かった』



無理に笑顔を作ってそう言ったけど、この一言で、叶兎くんの表情がまた強く揺れた。



「…馬鹿。こんな時まで、俺の心配なんかしてんじゃねぇよ……」



いつもは強気で突っかかってくるのに、今は弱く苦しそうに呟く。



『…だって…叶兎くんのこと、大好き………だから』

「……!いつもは、言わないくせに…っさっきからほんと…何でこういう時だけ素直なの…!」



……なんでかな、今ふと言いたくなっただけ…。

今なら、素直に言える気がしたから。



次第に視界が暗く沈み、音が遠ざかっていく。

それでも、頬に触れる彼の温もりだけは確かにあって。


その瞬間まで、必死に繋ぎとめていた意識の糸がぷつりと切れる。



「──胡桃!?おい、胡桃!!」



周りから名前を呼ぶ声が耳に届いたけど、もう返す力は残っていなかった。

私は安心の中で、静かに意識を手放した。