私には何も出来ないどころか、迷惑をかけてしまってもどかしかった。
隣にいる叶兎くんが私の手を握って、反対の手で頬に触れた。
「……お願いだから、もうあんな無茶しないで」
微かに声が震えている。
『叶兎くんが、無事で良かった』
無理に笑顔を作ってそう言ったけど、
この一言で、叶兎くんの表情がまた強く揺れた。
「…馬鹿。こんな時まで俺の心配なんかしてんじゃねぇよ……」
いつもは強気で突っかかってくるのに、今は弱く苦しそうにつぶやいた。
『…だって…叶兎くんのこと、大好きだから』
「……!いつもは言わないくせに、さっきからほんと…何でこういう時だけ素直なの」
……なんでかな、今ふと言いたくなっただけ
今なら素直に言える気がしたから。
次第に視界が暗く沈み、音が遠ざかっていく。
それでも、頬に触れる彼の温もりだけは確かにあって。
その瞬間まで、必死に繋ぎとめていた意識の糸がぷつりと切れる。
「──胡桃!?おい、胡桃!!」
周りから名前を呼ぶ声が耳に届いたけど、もう返す力は残っていなかった。
私は安心の中で、静かに意識を手放した。

