『……朔。ここで死ぬなんて許さないからね』


ふらつく足で、私は言葉を絞り出して言った。


『今までのこと、…ちゃんと責任取ってよ。こんな終わらせ方……朔の仲間は?蓮水さんの気持ちはどうなるの?…っ真っ当に生きて、償って。私、ちゃんと見てるから』


朔の目が大きく見開かれる。
その顔に浮かんだのは、戸惑いと苦しみ、そしてほんのわずかな希望。

握りしめた拳はまだ震えているけど、その奥に迷いがにじむ。


蓮水さんは一言も責めなかった。
ただ、じっと見守るように朔の答えを待っていた。

その隣で、叶兎くんはまだ鋭い視線を朔に向けている。


『行こう』


僅かに微笑んで朔の瞳を真っ直ぐ見つめる。

朔は唇を震わせ、観念したように力なく頷いた。


「……わかった」


蓮水さんに続いて、全員が一斉に出口へと駆け出す。


足を動かすたびに、視界が揺れて頭がズキンと痛んだ。
それでも炎の渦を抜けるように、私たちは必死に出口へ走る。

足は鉛のように重くて、一歩ごとに地面に吸い込まれるみたいだった。



『……はぁ、……っ』


焦げた煙が肺に入り込んで呼吸が浅くなっているのが自分でも分かった、正直…このまま出口まで走り続けられる気がしない。


次第に頭が熱でぼんやりして、視界の輪郭が霞む。

…私、今、どこを走ってるんだろう…


「胡桃!大丈夫!?」


不安定な足取りの私に気づいて、叶兎くんが肩を支えてくれたけど、


『……だい、じょぶ……』


声が震えていた。自分でも驚くくらい、掠れている。


……正直、もう、やばい


それでも心配をかけたくなくて無理やり笑おうとした瞬間

ふ、と足から力が抜けた。


『っ……!』


前のめりに倒れそうになった瞬間、強い腕が私を支えた。

そのまま体がふわりと浮いて、
叶兎くんの腕に軽々と抱き上げられていた。

驚いて目を見開いた私を、叶兎くんが真剣な目で見下ろしている。