【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




胸の奥で、光がかすかに脈打つ私の“無効化”の力。

でも、こんなに近くで触れているのに、さっきまでのように上手く発動してくれない。


何で……相手が、朔だから…?



「……やっぱり、欲しいな…」



朔が首を傾げて覗きこんだ。

幼いころ、泣きそうな私を慰める時の仕草のように。


なのに目だけが鋭くて。



『…私、朔を助けたい』

「…助ける?何それ、意味わかんない」



その時、天井板が一枚はらりと落ち、すぐ横の棚を直撃した。


衝撃で棚の中身が崩れ落ち、「コトン」と錆びた缶ケースが足元に転がる。

ぱかりと蓋が開いて中身が散らばり、見覚えのある写真に私は思わず缶ごと拾い上げた。


幼い頃の私と朔が並んで笑う、少し色あせた二人の写真。

小さな封筒の表に、拙い字で書かれた“朔くんへ”の文字。

それも、一枚じゃない。束ねられた私の手紙。



『…え…これ、まだ持って…』



驚きと、少しの嬉しさが滲む。

てっきり朔の中でとっくに過去になったと思っていたものが…まだここに、残っていた。



「当たり前。言ったじゃん、僕。君の事が好きだ、って」



その一言に、胸がぎゅっと掴まれる。

どんなに変わってしまったように見えても、確かにここに、昔の朔の影は残っている。



「こんなに君の事を想ってるのに。…何で僕じゃダメなの?」



朔が私の手首を掴んだ。

ぎゅっと、少し痛いほどに強く。