呆然とする私に、赤羽くんは静かに告げる。
「…ねえ胡桃」
『?』
「俺のものになってよ」
『…………は?』
いやいやいや
どうしてそうなった。
ホントに、さっきから突拍子もないことを次々と…
「あ、誤解しないでね。毎日血を吸わせてって意味だから、他意はないよ」
いや、それは、うん、分かってる。
さっきまで私にすっごい不機嫌な顔向けてた人だもん、深い意味がない事くらい分かる。
真顔でとんでもない事を言ってくる赤羽くん
それどういう感情で言ってるの…
『嫌ですけど…』
「この部屋に住むんだよね?」
『だってそれつまり餌ってことじゃん』
「会長命令」
『こんなことに権力使わないで!』
噛み合ってるようで噛み合ってないこの会話。
でも、彼の視線は冗談には見えなくて。
…そして生徒会長の権限を使うべき場所は絶対にここではない。
「……ま、今はまだいっか。言っとくけど俺、狙った獲物は逃さないタイプだから。」
何も良くはないんですけども…
ぞわりと背筋を撫でる言葉を残し、赤羽くんはすっと立ち上がる。
「じゃ、おやすみ」
『おやすみ…』
さっき机に置いた本を持って涼しい顔をしながら部屋に戻ってしまった。
赤羽くんが言うと冗談に聞こえないのが怖い…
既にもうこれから平凡に平穏に暮らしていける気がしなくて、静かな学園生活を送るのは半分諦めながら私も部屋に戻った。

