まだ幼い妹と弟は力が弱く、他人に影響を及ぼす程ではなかったけど俺はそうも言ってられなかった。
当時の俺は能力がどんどん強くなっていて、自分の能力を抑える方法が分からなくて。
相手と少し話すだけで、施設の職員も、同じように暮らしている子供たちも、俺に惹きつけられておかしくなっていく。
俺一人ならまだ耐えられた
けど、その視線は妹と弟にまで向けられて
「まだ小さいからって油断するなよ。あの子たちも、あいつと同じ血だ」
「吸血鬼なんだってね。話したら心を奪われるなんて、…気味が悪い」
心臓が、殴られたみたいに痛かった。
妹と弟は何の罪もないのに。
……俺がここにいたら、この子達まで居場所を失う。
そんな毎日に耐えられなくて、
1ヶ月も経たないうちに俺は施設から脱走した。
お金も住む場所も何も持っていない状態で飛び出して、
無計画なのは痛いほどわかってる。
けど、このままじっと耐えていたら
壊れると思った。
……だからこの夜、覚悟を決めたんだ
──俺が1人で稼いで、最低限の生活ができるようになってから3人を迎えに戻ろうって。唯一残された家族は…俺が絶対に守る、って。
辛い思いをするのは、俺だけでいい。

