──あの日から俺の時間はずっと止まったままだった。



全ての始まりは4年前、
中学3年生になったばかりの頃。




俺の両親は、事故で死んだ。




けれど現場には不自然な痕跡ばかり残っていて、ブレーキ痕がなく、衝突の形も「自然な事故」には見えない状態だった。

それでも調査は途中で打ち切られ、「迷宮入り」

事故か、事件か
答えは出ないまま終わってしまった。

初めのうちは、警察が動いてくれないなら自分で証拠を集めてこの事故の詳細を調べようと思ってた。


でも、当時は中学生の歳で妹2人と弟を抱え
何も持たないまま取り残された状況で
そんな事をする余裕なんてなかった。


その後俺達4人は警察に保護されて施設に入れられ、食事も寝床もあったし世間的には“救われた”ってやつだと思う。

でも、そこで俺たちを見る周囲の視線は冷たかった。



理由は簡単だ

俺たちの家系は代々「魅了」の力を持つ。
目を合わせれば、相手に触れれば、簡単に心を縛れる。
血筋が強い吸血鬼には通じないけど、一般的な人間やそこまで血筋の強くない吸血鬼には十分すぎるほど強力な力だった。


気を抜くだけで、そのつもりがなくても相手の心を無理やり縛ってしまう。

この能力のせいで、中学生の年になってからはほとんど学校にも行っていない。


だから親戚も、近所の人も、昔から誰も俺たちに近寄ろうとしなくて、両親を失っても誰かに助けてもらう事は不可能だった。



「……目を合わせるな。おかしくなるぞ」
「あの家系は危ない。関わらない方がいい」



もう、何度聞いたか分からない拒絶の言葉。

小声で囁く大人たちの言葉は、全部耳に届いていた。