返事をする間もなく、天音くんは視線を逸らし
苦く笑って吐き捨てる。



「…ほら、答えられない」



わざと軽く鼻で笑ってみせるけど、そこには冗談めいた明るさなんて一欠片もなかった。



「俺がどんな気持ちでいたかなんて全然知らないでしょ?無責任に踏み込んで来んなよ」



強がるように放たれたその声は刃のように鋭いのに、どこか脆く震えていて。

胸の奥にしまいこんでいた本当の痛みが言葉の端々から零れてしまっているのがわかる。

返す言葉を探そうとしても、どうすればいいのかわからない。

喉の奥で声がつかえて何も言えなかった。



──その沈黙を破ったのは、鋭い声だった。



「…おい」



振り返ると、叶兎くんに肩を強引に引き寄せられて、強い力と共に真っ直ぐな視線で天音くんを射抜いている。

辺りを見回すと、さっき部屋の中に攻め入って来た男達は全員気絶して床に崩れ落ちていた。部屋の空気が一気に静まり返る。


「天音、もういいだろ」


叶兎くんが、落ち着いた声で言った。


「本音を言え。俺達を頼れよ」