「じゃー1口」
『ちょ、強引!』
宣言どおり、叶兎くんは本当に軽く噛みつき、すぐ離れた。
…でも、一口だからって「いいよ」とは言ってない!
彼にとって吸血は水分補給みたいなものなんだろうけど私にとっては全然違う。
こんな緊張感漂う場面で、どうしてそんな余裕なんだろう。
頬にじんわり熱が残り、心臓が早鐘を打つ。
「…強引なとこも好きなんでしょ?」
耳元でそう囁かれ、昨夜の自分の言葉が一気によみがえる。
『…〜!』
反論しようと口を開いたのに、言葉が出てこない。
そんな私を見て、叶兎くんは悪戯っぽく笑った。
「可愛い」
その笑顔を見ると、”楽しそうだし、まぁいっか”と気づけば私も折れてしまう。
本当にずるい。
…というか、“強引なとこも嫌いじゃない”とは言ったけど、“好き”なんて言ってないし!
でも、今さら訂正する勇気もなくて、言い返すのは諦めた。

