翌日──。




「蓮水の合図であの扉から入る、羽雨、中の様子は?」

「特に変わったことはなさそう。罠もないし待ち伏せもされてない、蓮水の事は信じて大丈夫だと思う。…でも叶兎、ホントに胡桃も連れてくの?」


飛鳥馬くんの視線が私へちらりと向く。
その一瞬に、心配と不安がにじんでいるのが分かって胸がむず痒くなる。


「こんなとこ連れてくるつもりじゃなかったけど、…胡桃の力は必要になるかもしれないから」


叶兎くの声に、迷いはなかった。

彼なりに私を戦力として見てくれていて、それが嬉しくもある。


私たちは茂みの陰にしゃがみこみ、息を潜めて建物の様子を伺っていた。

目の前にそびえるのは、BSのアジト。
重厚な門扉の奥、影のような見張りがゆらゆらとうろついている。




昨日、蓮水さんの話を聞いたあと…悩みに悩んだ末、叶兎くんは協力する決断をした。

天音くんの妹と弟はWhite Lillyのアジトに匿ってあり、そこは流風くんが守ってくれている。

支援としてWhite Lillyの仲間も周囲に待機しているけど、表に立つのは私たち幹部だけ。

少数精鋭で突入するのが今回の作戦だ。


「天音は…2階、総長の天羽は3階にいる。一階にも幹部が数人」


飛鳥馬くんの能力は、“空間把握”の能力。


空気の流れを通して近くの物や人の位置を認識する事が出来るらしい

会った事がある人であれば、誰がそこにいるのかまで分かるんだとか。


「ターゲットは2人、けど胡桃を守る事が最優先ね」


そう、きっぱり言い切った叶兎くん。