じゃあ天音くんが私たちを裏切ったのは、自分の意志じゃなくて…選べなかったから。
家族を守るために、そうするしかなかったからなんだ。
頭の中で、今までの出来事がつながっていく。
BSのアジトで私を敵から隠してくれた時も、彼は「今は指示されてないから」って曖昧に笑っていた。
あれは…私たちを思っての精一杯の抵抗だったんじゃないか。
胸の奥がきゅっと締めつけられる。
「で、最初の話に戻るけど。」
蓮水さんはあえて軽い調子を装いながら言った。
「俺は明日BSを中から壊す、そこにあの子達がいるのは危険だから預かって欲しい。んで、その混乱に紛れて朔と接触して欲しいって事なんだけど。赤羽もいい加減朔と決着つけたいだろ?」
「…。」
決着、その言葉に叶兎くんは口を噤んだ。
どちらにせよBSとはいつか決着を付けなければいけないのだろう。
蓮水さんの『幻覚を見せる能力』は、正面から敵として戦えば非常に厄介だ。
けれど、敵組織が内側から混乱しているタイミングなら、攻め込む絶好のチャンスでもある。
「壊すって、具体的に、お前は何するつもりなの?」
「んまあ、物理的に?協力してくれるなら教えてあげるよ」
……うわぁ、なんかすごく胡散臭い……!
他のみんなの方を見渡してみても、「うーん」と頭を抱えていて、まだ蓮水さんのことを完全には信用しきれていない様子だった。
すると蓮水さんは少しだけ目を細めると、声をふっと低く落とした。
「じゃあ、言い方を変える。」
蓮水さんの瞳に、鋭い光が宿る。
「……天音は大切な家族を人質に取られてたから、あんたらを裏切らざるを得なかった。……それを聞いて、まだ天音のことを『仲間』だと思えるんなら……あいつを取り戻したいって、思わねぇ?」
“あいつ、自分からは絶対帰ってこねーよ。”とぼそっと呟いた蓮水さんの発言に、更に空気が張りつめた。
「俺、嘘はつかねぇ主義だから」
息の詰まるような長い沈黙の末──叶兎くんは、静かに深く息を吐き出した。


