【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



じゃあ天音くんが私たちを裏切ったのは、自分の意志じゃなくて…選べなかったから。

家族を守るために、そうするしかなかったからなんだ。


頭の中で、今までの出来事がつながっていく。


BSのアジトで私を敵から隠してくれた時も、彼は「今は指示されてないから」って曖昧に笑っていた。

あれは…私たちを思っての精一杯の抵抗だったんじゃないか。

胸の奥がきゅっと締めつけられる。



「で、最初の話に戻るけど。」



蓮水さんはあえて軽い調子を装いながら言った。



「俺は明日BSを中から壊す、そこにあの子達がいるのは危険だから預かって欲しい。んで、その混乱に紛れて朔と接触して欲しいって事なんだけど。赤羽もいい加減朔と決着つけたいだろ?」

「…。」



決着、その言葉に叶兎くんは口を噤んだ。

どちらにせよBSとはいつか決着を付けなければいけないのだろう。


蓮水さんの『幻覚を見せる能力』は、正面から敵として戦えば非常に厄介だ。

けれど、敵組織が内側から混乱しているタイミングなら、攻め込む絶好のチャンスでもある。



「壊すって、具体的に、お前は何するつもりなの?」

「んまあ、物理的に?協力してくれるなら教えてあげるよ」



……うわぁ、なんかすごく胡散臭い……!

他のみんなの方を見渡してみても、「うーん」と頭を抱えていて、まだ蓮水さんのことを完全には信用しきれていない様子だった。


すると蓮水さんは少しだけ目を細めると、声をふっと低く落とした。



「じゃあ、言い方を変える。」



蓮水さんの瞳に、鋭い光が宿る。



「……天音は大切な家族を人質に取られてたから、あんたらを裏切らざるを得なかった。……それを聞いて、まだ天音のことを『仲間』だと思えるんなら……あいつを取り戻したいって、思わねぇ?」



“あいつ、自分からは絶対帰ってこねーよ。”とぼそっと呟いた蓮水さんの発言に、更に空気が張りつめた。



「俺、嘘はつかねぇ主義だから」



息の詰まるような長い沈黙の末──叶兎くんは、静かに深く息を吐き出した。