「…ずっと…好きだった」

『え…?』

「くーちゃんのことが、好き」


そう言われて私は何も言えなかった。

何の根拠もないけど、
私を見る朔の視線が嘘だとは思えなかったから。

でも、そんなこと今まで一言も…

あの時朔が何も言わずにいなくなってから、嫌われちゃったのかなって思ってたのに。


「叶兎よりもずっと前から君の事が好きだ。あいつのところになんか戻らないでよ」

『ならあの時何も言わずにいなくならないでよ…私だって…』


私だって、あの頃は朔の事が…

胸の奥に押し込んでいた想いが、思わず口をついて出かける。

けど次の瞬間、吐き出すように続けてしまった。


『…それに、私じゃなくて血が欲しくて私を連れてきたんでしょ?』

「確かに血は欲しいけど、それは君の血だから…」

『私の意見なんて聞くつもりなかったくせに!』


思わず声を荒げてしまった。

再会を願っていたのに、その願いがこんな形で叶うなんて。
期待が一瞬で打ち砕かれた悔しさと悲しさで胸が締め付けられる。

最初から私に拒否権なんてなかった。

どれだけ言葉を飾っても、行動が示しているのは「血が欲しい」ただそれだけ。


「…チッ、めんどくさ。」


一瞬の柔らかさは消え、朔の顔に冷たい仮面が戻ってしまった。
ぞくりと背筋が震えた。


…ほら、
私の事が好きなんて嘘ばっかり。