「…もしかして、あんたなら──」


蓮水さんは意味深に目を細め、そして何かに思い当たったように口を開きかけたその時、ガチャリ、とドアノブが回り低い音を立てて扉が開いた。

BSの総長──天羽朔が、部屋に入ってきた。


「朔、おかえり」

「あぁ、永季もお疲れ。少しの間胡桃と2人だけにして」

「分かった。何か用があったら呼んでくれ」


端的に会話を交わし、蓮水さんは朔と入れ替わるように部屋から出ていった。

朔がそのままこちらに歩いてきたかと思えば、
正面からガバっと私を抱きしめる。


な、何…?!


朔の意図が全く分からず、私は固まったまま視線を朔の方へ向けた


『…?』

「…やっと、会えた。」

『朔…?』

「ずっと会いたかった…この前は邪魔が入ったし」


そう言って私を見た朔の表情は明るかった。

昔の朔と同じ優しい笑みを浮かべている。

この前の、冷たい目をした朔が嘘みたいで。


ほんの一瞬、目の前の彼が“幼い頃の朔”に戻ったように錯覚してしまう。