『九条くん後ろ!』
「っ!」
九条くんが来てくれてほっとしたのもつかの間、
私の正面、九条くんの後ろにはBSの服を着た数人の男達が立っていた。
もうここまで追ってきたなんて…
…いや、違う
あの人たちの様子を見る限り走ってきたようには見えない
……最初から、近くにいた?
人数の差というのはどうにもならないもので、
狭い路地の中で九条くんはあっという間に囲まれてしまった。
「さ、あっちは任せておいて俺らは行こうか」
『待っ、離して!』
必死に抵抗するけど天音くんの手はびくともしない。
そのまま車の後部座席に押し込まれて、背後から口元を布で塞がれた。
甘い薬品の匂いが鼻を突く。
だんだんと視界がぼやけて、意識が朦朧とした。
「胡桃っ…!!」
殴りかかってくる敵と戦いながら遠くで私の名前を呼ぶ九条くんの声を最後に
私の意識は途切れた。

