天音くんの笑顔は、もうどこにもなかった。

氷のように冷たい目で画面を見つめ、無言で着信を切る。



『天音…くん、何で私の携帯取ったの…?』



一歩、こちらに近づいてきた。


恐る恐る問いかけた声は、震えている。


…思い返してみれば、

やっぱり天音くんは時々様子がおかしかった

時々…今みたいな、どこか遠くを見るような表情をしていた気がする。


そう感じた私の直感は間違っていなかったはずだ

だから、もっとはやく、気づいていたら。



「ゴメンね、これが俺の仕事だからさ」

『仕事…?』


腕をぐいっと引っ張られて、一気に天音くんとの距離が縮まる。

でもここで抵抗したところで吸血鬼相手じゃ敵わないのは分かっていた。



「おい!…胡桃をどこに連れて行くつもりだ」


その時、路地の奥の道から九条くんが駆け込んできた


「あー、めんどくさいのが来た。」

「質問に答えろ」

「そんなの聞かなくてもわかるでしょ?」