【胡桃side】


「んじゃ俺そろそろ寝るから部屋戻るねー」

「おい待て逃げるな」


九条くんが天音くんの腕を掴もうと手を伸ばしたけど、天音くんは軽やかにヒョイっと避け、そのまま部屋に戻ってしまった。

ガチャと鍵をかける音が聞こえたので追いかけても無駄だろう。


「ったく、マジで何なんだアイツは…」


九条くんはため息をつきながら、さっきまで天音くんが座っていた私の隣に腰を下ろした。

その背中を見ながら、心の中で小さくため息をつく。天音くんの行動も言動も、全然理解できない。


『ねえ、さっき言ってた純混血がどうたら…って何の話?』

「え?あー…」


…え何、そんな答えにくいことなの。余計気になるじゃん。

天音くんのさっきの行動も意味不明だし、
何でいきなりキスなんか…


「…悪いけど詳しい事は話せねぇ。…ただ、一つだけ言うなら…、アイツは、天音は敵だ」

『………敵?』

「これ以上は言えねぇけど、…だから…その、お願いだからアイツと2人きりにはならないでくれ」


これ以上は言えないって…九条くんは一体何を知っているんだろう。
頭の中で疑問符がぐるぐる回る。


「今の話は誰にも言わないでくれ」


天音くんが、敵…?どういうこと?


でも、思い返すと時々天音くんの様子は確かにおかしかった。
彼が私を見る時の視線は、他の生徒会メンバーを見る時のそれとは少し違う気がする。