俺が何者かも知らず、俺の危うさにも気づかずに、ただ心配そうに俺を見てくる。


『…何か、悩んでるの?』


そう言われて、俺は何も答えない。

何も言えなかった。


「……」


ねえ、

警戒心は、常日頃に持つべきだよ。


『んっ!…』


理性より衝動が先に動いて、
気づけば俺は胡桃ちゃんの唇を奪っていた。

勢いだった、この後のことも何も考えずに。

驚いたように肩を掴まれて、押し返される。
当然だ。普通はそうなる。


『…っなんで、今…』


その目に浮かぶ動揺と困惑。

……やっぱり、他の女の子とは違う。
俺の中に眠っていた直感が確信に変わった。

この子は…紛れもなく純混血。


「さぁ、何でだと思う?」


俺は冗談めかして誤魔化す。

いっそのこと俺を嫌いになって欲しい。

…その方が、今後の俺の罪悪感も薄れるから。


『天音くんが何考えてるのか…全然わかんないよ』

「胡桃っちのこと、欲しくなっちゃった。的な?」

『…嘘だよね?』

「はは、厳しーな。胡桃ちゃんは」