総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




「誰?お前」


『えっと…朝宮、胡桃です』



だって、この状況、気まずすぎるから…!

…やっぱり、大人しく人だかりが散るのを待てば良かった…!



並木道の端、ベンチに一人の男子生徒が横たわるように座り込んでいて。

その顔色は驚くほど白くぐったりとしていて、素通りするにはあまりに具合が悪そうだったから。

お節介かもしれないけど、無視して通り過ぎる勇気もなく…。



『あの…本当に大丈夫ですか?具合悪いなら保健室とかに…』

「あのさ、それ俺に必要?」



返ってきたのは、驚くほど抑揚のない冷たい声だった。

ゆっくりと顔を上げた彼の瞳は、氷のように冷え切っていて、まっすぐ私の心臓を突き刺してくる。



「俺が誰だか分かってて言ってんの?」



誰って言われても、私は今日来たばかりだ。

心臓がバクバクと音を立てる。


な、なにこの人……。

心配して損した…っていうか、なんでそんなに偉そうなの!



『私、今日転校してきたので貴方が誰なのかは知らないですけど…具合悪い人はほっとけないです』


「あーーー…」



精一杯の勇気を振り絞って言い返すと、彼はわずらわしそうに頭に手を当て、ゆっくりと身を起こした。



「……女ってほんと、余計なことしかしないよね。ありがた迷惑、って言葉知らない?」



吐き捨てるように言われ、心底迷惑そうに「チッ」と小さな舌打ちをされる。


いくらなんでも心配してくれた人に対して失礼すぎませんか…!?


反論もできず黙っていると、焦茶の前髪の隙間からのぞいた鋭い瞳とばっちり視線が重なった。



「……いつまで突っ立ってんの。邪魔」