「誰?お前」

『えっと…朝宮、胡桃です』



だって、この状況、気まずすぎるから…!



並木道の端、ベンチに横たわるように座り込む男子生徒がひとり。

顔色は悪く具合も明らかに良くなさそうで、素通りするのも気が引けた。
だから声をかけてみたら…



『あの…本当に大丈夫ですか?具合悪いなら保健室とかに…』

「あのさ、それ俺に必要?」


抑揚のない声。
冷え切った瞳が、まっすぐ突き刺さってくる。


「俺が誰だか分かってて言ってんの?」



…こんな状況に。


転校してきたばっかでこの人が誰とか知らないし、ただ具合悪そうな人がいたから声をかけただけだ。

そもそもこの人なんでこんな偉そうなの。



『私、今日転校してきたので貴方が誰なのかは知らないですけど…具合悪い人はほっとけないです』


「あーーー…」



男の子は頭に手を当て、ゆっくりと身を起こす。



「……女ってほんと、余計なことしかしないよね。ありがた迷惑、って言葉知らない?」



吐き捨てるように言い、心底迷惑そうな顔でチッと小さく舌打ちをする。



…は?

いくらなんでも心配してくれた人に対して失礼すぎませんか


反論もできず黙っていると、焦茶の前髪の隙間からのぞいた鋭い瞳とばっちり視線が重なった。


「……いつまで突っ立ってんの」