「忙しいと思うし、わざわざ送ってもらわなくても大丈夫だよ」と私は慌てて手を言ったけど、叶兎くんは譲らず、結局ふたりで並んで校舎の方へと戻ってきた。
叶兎くんの横顔をチラッと盗み見ながら、まだ熱を持っている自分の頬を隠すように歩いていると…。
「あれ、叶兎と胡桃ちゃんー?」
聞き覚えのある声にはっと振り返る。
向こうから手を振って歩いてきたのは、流風くん。
「やっぱり!久しぶりだね」
「流風くん!?と…え、もしかしてこれみんな…」
流風くんの爽やかな笑顔の後ろに視線を向けた瞬間、私は思わず絶句した。
そこにいたのは…いつも見慣れた制服姿ではなく、白を基調とした特攻服のような、凄まじく存在感のある衣装に身を包んだ男の人たちの集団。
ざっと見渡しただけでも、十人以上は確実にいる。
な、なにこの圧……!? 迫力が凄すぎるんだけど……っ!
こんなイカつい格好をした集団が学園内をゾロゾロ歩いていたら、普通の生徒なら悲鳴を上げて逃げ出すレベルだ。
私は以前からみんなと顔見知りだからまだ落ち着いていられるけど……ふと隣を見ると、叶兎くんが片手でガシッと額を押さえて頭を抱えていた。
「待って、何でこんな大人数で来てんの?」
やっぱそうだよね、これ全員White Lillyの人達だよね。
いくら身内の文化祭だからって、こんな大所帯で押し寄せてくるとは思わなかったのか、叶兎くんですら相当困惑しているみたいだった。
「たまにはこういうのもいいかなって!」
流風くんがいたずらっぽく笑い、叶兎くんは眉をひそめて容赦なく突っ込む。
「いやそういう問題じゃないって、こんな集団が学園内歩いてたら生徒がびっくりするだろ」
それはそう、本当にそう。
こんな集団がいたら普通に怖い。
心のなかで全力で同意していると、人混みに紛れるようにして隠れていたひとりの小さな女の子がひょっこり顔を出した。
腰まで伸びた綺麗な黒髪ロングに、吸い込まれそうな赤い瞳。
「…お兄ちゃん、一緒に遊ぼ」
「こら、2人の文化祭デート邪魔しないの」
その女の子が叶兎くんの服の裾をキュッと掴んでそう呼ぶと、隣で流風くんがその子を宥めた。
お兄ちゃん……?
っていうことは、この可愛らしい子が、叶兎くんの妹ちゃん……!?


