「胡桃、俺が女嫌いなの知ってるでしょ?」
私の様子がおかしいことに気づいたのか、叶兎くんが不服そうに眉をひそめる。
『でも私みたいな例外がいたかもしんないじゃん…』
現に叶兎くんはキスだって私より遥かに上手だし、女の子をドキドキさせる扱いにも慣れている。
私なんて叶兎くん以外に男の人と付き合ったことすらないから、恋愛初心者すぎて大人な対応なんてできるはずもない。
過去の恋愛事情なんて聞きたくもないし、聞いて傷つくのは自分だって分かっているのに、胸のモヤモヤがどうしても収まらなくて、私はつい面倒くさい恋人みたいなことを口走ってしまっていた。
「……これでも慣れてるって思う?」
叶兎くんはため息をつくと、私の左手をつかんで自分の胸元へと引き寄せた。
服越しに伝わってくる、強く激しい音。
ドクン、ドクン、ドクン──と、手のひらを通じて手の甲に届く心臓の鼓動。
……私と同じくらい……ううん、私以上に速い……っ!?
「全部、胡桃が初めてなんだけど」
私が…初めて…?
いつも揶揄われるし余裕そうに見えるけど、ずっとこんなにドキドキしてくれてたってこと…?
「いつも……全然、余裕なんてねーから」
そう言ってふいっと目を逸らした叶兎くんの横顔は、ほんのり赤く染まっていた。


