私がキスをするまで頑なに目を開けないつもりの叶兎くんを見て、観念した私はついに腹をくくった。
そっと顔を近づけ、緊張で震える自分の唇を、叶兎くんの唇に軽く重ねる。
う、自分からするのって……想像以上に恥ずかしい……っ!!
ふに、と重なる柔らかくて温かい感触。
恥ずかしさのあまり一瞬で離れようとしたけど、逃がさないと言わんばかりに後頭部を大きな手でガシッと押さえ込まれてしまった。
『んっ……!?』
結局、離れるどころか引き寄せられ、いつものように深くて長いキスに変わってしまう。
叶兎くんの口の中に、さっきまで吸っていた私の血が少し残っていたみたいで、かすかに鉄っぽい味がする。
私にとってはただの血の味のはずなのに、吸血鬼である叶兎くんにとってはこれが「甘い」んだよね。
人間の私にはその感覚を100%共感することができないのが、なんだか少しだけ悔しかった。
「あはは。胡桃、息切れしすぎ」
唇が離れた瞬間、私の顔を覗き込んで叶兎くんが意地悪そうに笑う。
『…はぁっ…叶兎くんのキスが長すぎるせいだよ…!』
毎度のことながら、私は途中で息が続かなくなって苦しくなるのに、叶兎くんはまったく平気な顔をしている。
悔しい。本当にズルい。
「慣れてないとこも可愛くて好きだけど」
『…そーゆー叶兎くんは随分と慣れてるよね』
口をついて出た言葉には、自分でも驚くほどトゲが含まれていた。
これだけキスが上手でイケメンの叶兎くんなら、昔彼女のひとりやふたりいたっておかしくないんじゃないか。
そんな考えが頭をよぎった瞬間、胸の奥がチクッと嫌な音を立ててモヤついた。


