腕は血管が細く、注意して吸わなけば出血と痛みを伴う場所だ。
それなのにあいつは、身勝手に噛みついた
胸の奥で、激しい怒りとドロドロとした嫉妬がぐちゃぐちゃに混ざり合う。
あいつ、絶対許さねぇ……。
胡桃の全部は、俺のものだ。
血を吸っていいのも、その綺麗な肌に傷をつけていいのも。
抱きしめていいのも、唇を重ねていいのも。
全部、俺だけだ。
『っ…!』
耐えきれなくなり、腕に残る噛み痕へ直接唇を寄せた。
朔が刻んだ不愉快な痕跡をすべて塗りつぶすようにじっくりと唇を滑らせ、溢れた赤い血を舌先で丁寧に掬い取っていく。
胡桃の血を“あいつが一度でも味わった”と思うと、胸の奥でさらにイライラが膨れ上がる。
『や…そんなに、舐めないでっ…』
血を吸われること自体には少しずつ慣れてきた胡桃だったが、傷口を塞ぐために舌で癒やす行為にはいつまで経っても慣れないらしい。
顔を隠すように、空いている方の腕を自分の目元に乗せて覆い隠してしまう。
「ダメ、隠さないで。顔見せて」
その腕を強引に引き剥がすと、耳まで真っ赤に染めた顔で俺を見つめ返す胡桃とバッチリ目が合った。
あー…。やばいな………これ、本当に、反則級に可愛い……。
メイド服着た好きな人が自分の下に押し倒されて、真っ赤な顔して見つめてくんの。
どう考えても、理性を試されてる。
これでもまだ耐えてる俺、本当に褒められるべきだと思う。


