【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



返事をする余裕もないほど、頭の中は胡桃のことと、朔の残した言葉でいっぱいだった。


足早に生徒会寮に駆け込んで、

その勢いのままロビーのソファーに胡桃を押し倒す。



『かっ、叶兎くんほんとに何──』

「あいつ…朔、お前はあいつの何?」



…本当は、もっと落ち着いて話そうと思ってた。

二人きりになったら冷静に聞くつもりだった。


でも、目の前に胡桃がいて。

“朔に触れられた胡桃”を見たら、俺の理性なんか一瞬で吹き飛んだ。



胡桃が怯えたような瞳で、下から俺を見上げてくる。


違う。こんな顔をさせたいわけじゃないのに。

だけど今の俺には、優しく問いかけてやれるような心の余裕なんて、これっぽっちも残っていなかった。



『朔…、は小さい頃の幼馴染で…でもさっきの朔、まるで別人みたいだった』



幼馴染…それで“くーちゃん”なんてあだ名で呼んでたのかあいつ。

でもよりによってなんでBSの奴と…。



『朔に、一緒にBLACK SKYのアジトにきてって言われて、断ったらいきなり血を吸われて…』



胡桃の右腕を掴み上げると、その白い肌の上に痛々しい赤い痕が残っていた。

噛み痕だ。まだじわじわと血が滲み出ている。