【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ





教室のドアをくぐる直前、朔はふっと足を止めて振り向いた。



「くーちゃん、待っててね。またすぐに会えるから」



……それだけを言い残すと、雑踏の中に消えていった。


…また会えるって何だよ。

あれだけ牽制したのにまだ胡桃に何かするつもりなのか。



マジでふざけんな……。



…とりあえず、今は文化祭の真っ最中だ。

まずは、この散らかりきった現場の騒ぎをどうにか収めなければならない。

クラスメイトも、うちの出し物に遊びに来ていた客も、あまりの出来事に言葉を失って固まっている。



「叶兎、一回胡桃と休んできなよ。あいつの件で話したいこともあるだろうし」



人混みをかき分けてやってきた春流が、気遣うようにそう声をかけてくれた。


だが、こんな大騒ぎを起こした当本人である俺が、現場を放り出して離脱するなんて、生徒会長としてのプライドが──。



……いや、もうこの時点で、プライドも何もあったもんじゃないか。



「あとお前がいると目立つ!騒ぎが大きくなる。ここは俺が何とかするから」

「…ありがと、春流」

「おう」



胡桃と話したいことがあるのは事実だし、春流にそう言われたら春流に頼るしかない。

俺は胡桃の手を取って、騒ぎから逃げるように生徒会寮の方へ走り出した。



『えっ、叶兎くんどこ行くの!?』

「……」

『ねえ、叶兎くんってば…!』