教室のドアをくぐる直前、朔はふっと足を止めて振り向いた。
「くーちゃん、待っててね。またすぐに会えるから」
……それだけを言い残すと、雑踏の中に消えていった。
…また会えるって何だよ。
あれだけ牽制したのにまだ胡桃に何かするつもりなのか。
マジでふざけんな……。
…とりあえず、今は文化祭の真っ最中だ。
まずは、この散らかりきった現場の騒ぎをどうにか収めなければならない。
クラスメイトも、うちの出し物に遊びに来ていた客も、あまりの出来事に言葉を失って固まっている。
「叶兎、一回胡桃と休んできなよ。あいつの件で話したいこともあるだろうし」
人混みをかき分けてやってきた春流が、気遣うようにそう声をかけてくれた。
だが、こんな大騒ぎを起こした当本人である俺が、現場を放り出して離脱するなんて、生徒会長としてのプライドが──。
……いや、もうこの時点で、プライドも何もあったもんじゃないか。
「あとお前がいると目立つ!騒ぎが大きくなる。ここは俺が何とかするから」
「…ありがと、春流」
「おう」
胡桃と話したいことがあるのは事実だし、春流にそう言われたら春流に頼るしかない。
俺は胡桃の手を取って、騒ぎから逃げるように生徒会寮の方へ走り出した。
『えっ、叶兎くんどこ行くの!?』
「……」
『ねえ、叶兎くんってば…!』


