【side叶兎】
天羽朔は、BLACK SKYの総長だ。
そんな奴が、胡桃に触れて、血まで吸った。
下手をすればあのまま胡桃を連れ去られてもおかしくなかった。
そう考えただけで俺があいつを殴るには十分な理由で、正直めちゃくちゃ焦っていた。
『叶…兎く、ちょ、こんなとこで…っ』
腕の中で小さく暴れる胡桃が、悲鳴混じりの声を漏らす。
それでも、俺は離さない。
──人前での吸血行為は、いわゆる牽制であり、独占欲の証。
…ふざけんなよ。
ただでさえイライラしてんだからな……。
思い返せば、さっき胡桃がどこぞのナンパ野郎に絡まれていた時点で、俺の頭には相当血が上っていた。
そこに加えて朔が現れて……もう俺の理性は完全に限界を超えてブチ切れていた。
ナンパ野郎だけじゃない。
当の胡桃はまるで気づいていないみたいだったけど、さっきから教室中の男たちが胡桃に向ける視線に、俺はずっと苛立ちを募らせていた。
だって、今日の胡桃は……どこをどう切り取ったって超絶可愛い。
メイド服を着ろって言ったのは確かに俺だ。
けど、まさかこんなに肩や胸元が開いて、スカートも短いなんて聞いてない。
今この瞬間だって、周りの奴らが胡桃の姿をジロジロ見てくるのが、心底許せなかった。
だから、これはただの吸血じゃない。
“俺のもの”と周囲に知らしめるための、絶対的な牽制だ。
「胡桃は、俺のものだ」


